内容説明 |
第2次世界大戦が勃発した1939年10月のまさに歴史的録音。ナチス・ドイツの隣国であるオランダで、ドイツでは演奏禁止となったマーラーの作品を演奏するというのは明らかに暴挙だと言わざるを得ない。それも、当初はウィレム・メンゲルベルクが指揮する予定だったのに急遽キャンセルとなり、代わりにドイツ人であるシューリヒトが代役をつとめたのである。
そして事件は最後の第6楽章「告別」で起こる。トルボリが歌う緊張感漂う最終楽章の「告別」において、後半も残り少ない頃、オーケストラが極限まで静まりかえったときに、一人の女性の無機質な冷たい声が貫いたのである。
「Deutcheland uber alles, Herr Schuricht !」(世界に冠たるドイツ帝国ですよ。シューリヒトさん!)
この直後、客席からは少なからずざわめきが起き、そのざわめきを制するかのように「シー」という声も聞こえた。また口笛も聞こえていた。
このような極限状態とも言える状況で、最後まで緊張感を維持して素晴らしい演奏を成し遂げたのはまさに奇跡的と言える。モノラル録音。
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